2015年 |
2015年12月 | 第141回句会 | 作品 弘明寺抄 (69) |
2015年11月 | 第140回句会 | 作品 弘明寺抄 (68) |
2015年10月 | 第2回一泊吟行句会 | 作品 |
2015年10月 | 第139回句会 | 作品 弘明寺抄 (67) |
2015年9月 | 第138回句会 | 作品 弘明寺抄 (66) |
2015年8月 | 第137回句会 | 作品 弘明寺抄 (65) |
2015年7月 | 第136回句会 | 作品 弘明寺抄 (64) |
2015年6月 | 第135回句会 | 作品 弘明寺抄 (62)(63) |
2015年5月 | 第18回吟行句会 | 作品 |
2015年5月 | 第134回句会 | 作品 |
2015年4月 | 第133回句会 | 作品 弘明寺抄 (61) |
2015年3月 | 第132回句会 | 作品 弘明寺抄 (60) |
2015年2月 | 第131回句会 | 作品 弘明寺抄 (59) |
2015年1月 | 第130回句会 | 作品 弘明寺抄 (58) |
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第141回句会 (2015年12月) 参加者:15名 |
■ 作 品 ■■■ |
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■ 弘明寺抄(69)■■ |
平成27年12月7日
松本 道宏 |
十二月の名句は 「冬菊のまとうはおのがひかりのみ 水原秋桜子」です。 |
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カラスウリ赤ゐ袈裟かけ地蔵尊 | 翁山歩存 |
素材が大変良く、まだカラスウリを掛けた地蔵尊を見た事がありませんが面白いところをとらえています。ただ表現を推敲した方がもっと句が良くなるかも知れません。 |
死化粧の紅あざやかに小夜時雨 | 飯塚武岳 |
人間死ぬとお化粧をして死に顔を飾りますが、特に女の方の口紅はあざやかに塗られます。この句も 「小夜時雨」の季語がよく効いています。 | |
青空に溶け込みそうな冬の月 | 野路風露 |
昼間見る月はまさに青空に溶け込むような感を受けます。自分の目でよく 観察されて詠まれています。 | |
斎場に煙ひとすじ冬の虹 | 飯塚武岳 |
斎場と焼き場が一緒になっているところではよくこのような光景を見かけます。一筋の煙が今焼かれているその人の煙と思うといたたまれませんが、この句「冬の虹」で救われています。 | |
第140回句会 (2015年11月) 参加者:18名 |
■ 作 品 ■■■ |
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■ 弘明寺抄(68)■■ |
平成27年11月7日
松本 道宏 |
十一月の名句は「しぐるるや駅に西口東口 安住敦」です。 |
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花巻の訛りほつくり零余子飯 | たま四不像 |
訥々と花巻の方便で語りながら零余子飯を食べている姿が見えてきます。訛「ほつくり」がよいです。 |
朝霧の切れ目に浮かぶ武家屋敷 | 志摩光月 |
朝霧の切れ目から見えた武家屋敷のなんといかついことか。この句には発見があります。 | |
一人旅ほかほか丹波の栗御飯 | 境木権太 |
一人旅をしているときの栗飯の上手さが伝わってきます。しかも丹波の栗御飯に美味しさが倍増してきます。 | |
泣相撲泣くも笑うも笑み誘ふ | 千草雨音 |
1歳前後の幼児の泣き声を土俵の上で競わせる日本の風習・神事で400年以上の伝統がありますが、開催日は神社によってまちまちで決まっていません。従って季語にはなっていませんが夏から秋に多いようです。無季の句ですが戴きました。季語定着の運動を起こそうではありませんか。秋の句として定着させんか。 | |
第2回一泊吟行句会 (2015年10月19日(月)〜20日(火)) 伊豆・城ヶ崎海岸 参加者:13名 |
■ 作 品 ■■■ |
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第139回句会 (2015年10月) 参加者:17名 |
■ 作 品 ■■■ |
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■ 弘明寺抄(67)■■ |
平成27年10月7日
松本 道宏 |
十月の名句は「鶏頭を三尺離れもの思ふ 細見綾子」です。 |
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オルガンの古りて音佳き秋日和 | 比良戸つつじ |
昔使っていた古びたオルガンの音色のよさを詠っています。秋日和大変良く効いています。 |
風鈴の舌を外して夏終わる | 菊地智 |
なかなか面白い川柳ぽい句です。確かに風鈴の舌を外せば風鈴は鳴らなくなり夏も終わりになります。 | |
うすうすと満ちくる千の鰯雲 | 夏陽きらら |
鰯雲のひろがっていく様子が巧みに詠まれています。 | |
大和路は祈る回廊秋ひより | 舞岡柏葉 |
着眼は良いのですが、「祈る回廊」が独善的で判るようで判りません。大和路を廻った時の感慨でしょうか。何んとなく引かれてしまいました。 | |
第138回句会 (2015年9月) 参加者:15名 |
■ 作 品 ■■■ |
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■ 弘明寺抄(66)■■ |
平成27年9月7日
松本 道宏 |
九月の名句は 「芋の露連山影を正しうす 飯田蛇笏」です。 |
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新涼やビルの彼方に熱気球 | 長部新平 |
熱気球と新涼の関係が面白いですね。熱気球がビルの合間から見えたのでしょう。唯、それだけのこときり言っていませんが、新涼がよく効いています。 |
秋澄むや祇園の杜に火と舞妓 | 東酔水 |
夏の暑いときに祇園祭を楽しんできましたが、祇園の杜にかがり火と舞妓の姿を映し出すには矢張り秋の澄んだときにぴったりでしょう。 | |
烏帽子岩を一息に呑む盆の波 | 舞岡柏葉 |
南の海から台風の起こす大きな波が打ち寄せてきますが、その波に烏帽子岩が一息に呑込まれてしまったのでしょう。盆の波のすごさを上手く詠っています。 | |
鳳仙花はじけて月日遙かなり | 比良戸つつじ |
大変お上手な句です。鳳仙花の果実は弾力性があり、触れるとすぐに弾けますが、弾けたさまを『月日遥かなり』と感じ取ったところに素晴らしい感性があります。 | |
第137回句会 (2015年8月) 参加者:14名 |
■ 作 品 ■■■ |
二次元に生きて音なきあめんぼう | 比良戸つつじ | ←最高得点 |
極暑なり仁王立ちする阿吽像 | 東酔水 | |
あめ色の籐椅子ひそり主待つ | 舞岡柏葉 | |
古池を二つに裂いて飛ぶ翡翠 | 境木権太 | |
砂日傘寝姿似たる親子かな | 千草雨音 |
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スッピンの妻のほつれ毛極暑来る | 松本道宏 |
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空蝉や背中のチャック開け放し | 野路風露 |
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夕凪て切りえの如き梢かな | 奥隅茅廣 |
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荷を負ふて行きつ戻りつ迷い蟻 | 飯塚武岳 | |
涼やかな読経の声や杉木立 | 志摩光月 | |
寧に梅の並びや土用干し | 菊地智 | |
青田から稲の香りが吹いて来る | 浅木純生 | |
汗飛ばし雄叫び挙げる荒神輿 | 柳風凡庸 | |
老いの身に夏風ふはりと蹤いてく | 村田一女 |
■ 弘明寺抄(65)■■ |
平成27年8月7日
松本 道宏 |
八月の名句は 『炎天に百日筋目付け通し 沢木欣一』です。 |
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涼やかな読経の声や杉木立 | 志摩光月 |
例えば大雄山最乗寺のような杉木立の中の読経の涼しさを感じました。 |
海月観る水族館は人の波 | 野路風露 |
薄暗い水族館に泳ぐ海月を観る人の波に驚いているのです。 | |
空蝉や背中のチャック開け放ち | 野路風露 |
空蝉の観察を良くされている句です。感心しました。 | |
あめ色の藤椅子ひそり主待つ | 舞岡柏葉 |
古い飴色になった藤椅子が座る主を待っている様子が窺われます。 最近は皆さんの句のレベルが向上し、選句するに苦労しています。今回も5、9、10、19、20、26、28、34、39、等の他、捨て難い句が多数ありました。 |
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第136回句会 (2015年7月) 参加者:16名 |
■ 作 品 ■■■ |
片仮名の帰化人の墓木下闇 | 千草雨音 | ←最高得点 |
坪庭も揚羽の舞いで華やげり | 菊地智 | |
雲の間に惑星直列梅雨の吉 | 浅木純生 | |
青と白雨粒載せて半夏生 | 境木権太 | |
電柱の影太りゆく麦の秋 | 比良戸つつじ |
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夏空に白球まぶしホームラン | 松本道宏 |
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上水の今はか細き桜桃忌 | 舞岡柏葉 |
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白百合に君を重ねて夢一夜 | 飯塚武岳 |
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浴衣着て今日は一日江戸気分 | 野路風露 | |
清流の川辺に遠く河鹿かな | 奥隅茅廣 | |
蟇無常の世にぞ生を受け | 志摩光月 | |
ほろほろとこぼれ落ちたる柿の花 | 東酔水 | |
空き家の香り立つよな柚子の花 | 森かつら | |
雨の野に桃色らせんねじればな | いまだ未央 | |
雨乞いの寺の中よりオルゴール | たま四不像 | |
立葵緩和病棟日当たりて | 村田一女 |
■ 弘明寺抄(64)■■ |
平成27年7月7日
松本 道宏 |
七月の名句は「薄や人悲しませる恋をして 鈴木真砂女」です。 |
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波を待つサーフインなべて黒ずくめ | いまだ未央 |
一寸あたり前のような感じを受けますが、茅ヶ崎海岸に行きますとこのような波乗りに興じている黒ずくめのサーファーの姿を見受けます。来る波を待っているサーファーの立ち並ぶ黒ずくめの姿は異様な感じを受けます。 |
煙雨中白鷺歩く植え田かな | 浅木純生 |
田植の済んだ緑一面の中に降っている粉糠雨。その中を歩いている白鷺の姿、即ち、緑と白が印象的です。私の住んでいる舞岡には田植の終わった今日この頃このような風景が屡見られます | |
嘘つかぬといふ人の嘘えごの花 | 千草雨音 |
自分は絶対に嘘をつかないと豪語している人ほど嘘をつきます。「えごの花」の配合も素敵です。えごの花は香りはよいのですが有毒物質が含まれています。 | |
雨乞いの寺の中よりオルゴール | たま四不像 |
今時、雨乞いをするお寺があるのかと不思議に思いましたが、雨乞いをしているお寺の中からオルゴールの音が聴こえてきたという意外性が面白いです。 |
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第135回句会 (2015年6月) 参加者:17名 |
■ 作 品 ■■■ |
バリトンもバスも競ひて蛙鳴く | 千草雨音 | ←最高得点 |
お揃いの下駄を鳴らして夏祭 | 松本道宏 | |
夏服の駅のホームに指差呼称 | 野路風露 | |
山鳩のひとこえ鳴けり青時雨 | 比良戸つつじ | |
片蔭に白き襟足先斗町 | 境木権太 |
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波除けに潜む磯蟹動かざる | 舞岡柏葉 |
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たえかねて葉より転びぬ朝の露 | 飯塚武岳 |
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蛇苺あれば近寄る夏帽子 | たま四不像 |
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伏流水豊かに流れ夏の富士 | 奥隅茅廣 | |
悔恨や薊の棘の傷熱く | 夏陽きらら | |
伐採と決まる葉桜そよぎをり | いまだ未央 | |
白百合や仏の道を照らしおり | 志摩光月 | |
頭上より鶯の声歩みとめ | 菊地智 | |
山写す代掻き終わる田圃かな | 浅木純生 | |
五月雨や雨宿りにも風情あり | 長部新平 | |
学童や飛び魚指しつ歓喜飛ぶ | 森かつら | |
目覚めれば薔薇の香りが咲いて待つ | 柳風凡庸 |
■ 弘明寺抄(63)■■ |
平成27年6月7日
松本 道宏 |
この度は思いかけず急性肺炎に患り、4月17日より5月2日まで入院しましたので今月は弘明寺抄 (62)と(63)を同時に発表します。 |
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鯉こくの味噌の香りや南風 | 比良戸つつじ |
素材は良いのですが、表現をもっと推敲したいです。 例えば「黒南風や鯉こくの味噌香りをり」のように。 |
さ緑の透る湯船や磨硝子 | いまだ未央 |
湯船が新緑のさ緑に映えていたのでしょう。『磨硝子』が良いです。 | |
伏流水豊かに流れ夏の富士 | 奥隅茅廣 |
柿田川や忍野八海に見る豊かな伏流水が詠まれています。 | |
鳥獣の戯画店見るや五月晴 | 奥隅茅廣 |
東京国立博物館で6月7日まで開催されていた鳥獣展ですが、この鳥獣戯画を題材にして句を作られた鈴木榮子さんは第18回の角川俳句賞を得て俳壇にデビューしています。 |
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■ 弘明寺抄(62)■■ | 平成27年6月7日 松本 道宏 |
この度は思いかけず急性肺炎に患り、4月17日より5月2日まで入院しましたので今月は弘明寺抄(62)と(63)を同時に発表します。 五月の名句は「玖槐や今も沖には未来あり 中村草田男」です。 |
第18回吟行句会 (2015年5月29日(金)) 世田谷線歴史巡り:松陰神社、豪徳寺ほか |
■ 作 品 ■■■ |
うす紅に楓の種のリボンめく | 千草雨音 | ←最高得点 |
新緑の松陰神社絵馬ゆれる | 野路風露 | ←最高得点
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小雨降る墓石の笠に苔の花 | いまだ未央 | |
夏草や都会の中の鉄路の間 | 大野たかし | |
をしみなく松下村塾芽吹きどき | たま四不像 |
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車窓から曇り空にも立葵 | 森かつら |
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風薫り閧フ木そびゆ豪徳寺 | 志摩光月 |
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大老の歴史の逸話春曇り | 川瀬峙埜 |
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家系図に文の名ありし新樹光 | 飯塚武岳 | |
ががんぼや直弼の墓不安定 | 比良戸つつじ | |
春吟行あっと驚く招き猫 | 土屋百瀬 | |
夏木立おだやかなる松陰像 | 銀の道 | |
脳内で白い夏野を思うなり | 東酔水 |
第134回句会 (2015年4月) 参加者:14名 |
■ 作 品 ■■■ |
繋がれし山羊が膝折る遅日かな | いまだ未央 | ←最高得点 |
腹太に身をくねらせて鯉幟 | 菊地智 | |
触るるるを拒むがごとき花牡丹 | 柳風凡庸 | |
春キャベツ地産地消の特売日 | 千草雨音 | |
背表紙の光る金文字夏近し | 比良戸つつじ |
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つばめつばめ潮のにほひてひるがへり | 夏陽きらら |
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たよりなき新芽寄り添ふ菊根分け | 舞岡柏葉 |
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早朝のバスを待つ手に花ひらり | 森かつら |
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振り向けば加賀弁のひと春の風 | たま四不像 | |
顔寄せて見つめる幼児たんぽぽ絮 | 川瀬峙埜 | |
チューリップ色とりどりに二万本 | 飯塚武岳 | |
慈雨優し八十八夜ちかづきて | 長部新平 | |
ふっくらと蛤坐る潮汁 | 奥隅茅廣 | |
原色の服で闊歩す巣立鳥 | 志摩光月 |
第133回句会 (2015年4月) 参加者:15名 |
■ 作 品 ■■■ |
音信の途絶えし人や桜咲く | 野路風露 | ←最高得点 |
乙女等の脚の長さや春の風 | 境木権太 | ←最高得点 |
春風や貼り紙ひとつ店仕舞 | 川瀬峙埜 | |
老木を覆い隠して桜満つ | 飯塚武岳 | |
種蒔くや十坪の畑に道生まる | 松本道宏 |
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菊根分け恙無く日の暮れにけり | 奥隅茅廣 |
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待ちわびし花に誘われ花に酔ふ | 千草雨音 |
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世を忘れつどいて酔わす桜かな | 志摩光月 |
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覗く子のにこと笑みたる春障子 | 比良戸つつじ | |
風を待ち今羽ばたきぬ花辛夷 | 夏陽きらら | |
多喜二忌やコントラバスに鍵かくす | たま四不像 | |
筍や朝掘り茹でて香り立つ | 長部新平 | |
老桜の吐息開花のとき刻む | 舞岡柏葉 | |
山寺や雪解の流れ石を打つ | 森かつら | |
花桜いまだ古酒甕にあり | 浅木純生 |
■ 弘明寺抄(61)■■ |
平成27年4月7日
松本 道宏 |
四月の名句は 「遠足の列大丸の中とおる 田川飛旅子」 です。 |
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老木を覆い隠して桜満つ | 飯塚武岳 |
桜が満開になりますと、普段見ている老木の桜の木か若い桜の木かが判らなくなります。満開の桜はすべての老木を覆い隠してしまいます。 |
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入学を待ち焦がれているランドセル | 野路風露 |
待ち焦がれているのはランドセルだけでなく、親御さんの気持ちまで表現されています。 | |
乙女等の脚の長さや春の風 | 境木権太 |
近年の乙女等はスタイルがよく脚が長くなり、春風の中を歩く姿は大変美しく、目に飛び込んできます。 | |
待ちわびし花に誘われ花に酔ふ | 千草雨音 |
桜前線も北上し始めるとたちまち日本全土を桜の花で覆い尽くされてしまいます。花見を待ち焦がれていた方達は花に誘われ花に酔っています。 |
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第132回句会 (2015年3月) 参加者:12名 |
■ 作 品 ■■■ |
鉛筆にのこる歯形や大試験 | 吉木つつじ | ←最高得点 |
種蒔きて待つとゆふ日の始まりぬ | 松本道宏 | ←最高得点 |
篆刻の鋭き線や春浅し | 千草雨音 | |
病いやや明かるさ見えて春の水 | 境木権太 | |
蒲公英のほろりと土の匂ひかな | 夏陽きらら |
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春一番心の闇を吹き払い | 飯塚武岳 |
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金縷梅を無造作に生け大花瓶 | 奥隅茅廣 |
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円空の色即是空はるの雪 | たま四不像 |
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師の訃報天の中空春の月 | 村田一女 | |
旧正と傘寿を重ね髪真白 | 菊地智 | |
細々と春ごと続く二月堂 | 舞岡柏葉 | |
枝垂るる蕾ふくらむ枝垂れ梅 | 柳風凡庸 |
■ 弘明寺抄(60)■■ |
平成27年3月7日
松本 道宏 |
三月の名句は「若狭には仏多くて蒸鰈 森 澄雄」です。
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鉛筆に残る歯形や大試験 | 吉木つつじ |
私にはこのような経験がありませんが、大試験で悔しい思いをしたときの歯形を見るたびに大試験を思い起こす気持ちが詠まれています。 |
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囀りや綺麗な色の服を買ふ | 千草雨音 |
春の装いに綺麗な服を買ったのでしょう。「囀り」の季語が大変良く効いています。 | |
春服や笑めばこぼるる糸切歯 | 吉木つつじ |
糸切歯即ち犬歯は笑って口を開いた時に見える歯ですが、「笑めばこぼるる」はよく観察された句で、詠むに難しい「春服」が効いています。 | |
篆刻の鋭き線や春浅し | 千草雨音 |
「篆刻」の線が鋭いことと「春が浅い」こととは何の関係もありませんが、このようにいわれると篆刻の線が更に鋭く感じられます。 |
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第131回句会 (2015年2月) 参加者:15名 |
■ 作 品 ■■■ |
福笹を捌く乙女や片笑窪 | 舞岡柏葉 | ←最高得点 |
蝋梅や振り子時計のレストラン | 千草雨音 | |
行く年や逝きにし人の住所録 | 村田一女 | |
愛もなく一汁一菜うるめ焼く | 浅木純生 | |
突然に夫の名問われし冬日向 | 菊地智 |
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火の窯を懐に抱き山眠る | 松本道宏 |
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月冴えて明日は良いことありそうな | 野路風露 |
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理屈ばかり説きゐし夫の初笑 | 夏陽きらら |
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立春や風かわらねどこころ浮き | 志摩光月 | |
存分に日向ぼこして人恋し | 吉木つつじ | |
正月や床の間にあり一茶の句 | 奥隅茅廣 | |
初明り希望の色に染められて | 飯塚武岳 | |
冬座敷ほこりまみれの観音経 | たま四不像 | |
ぬっと出て白き伊吹の初景色 | 境木権太 | |
堀炬燵お尻を入れて顔を出し | 柳風凡庸 |
■ 弘明寺抄(59)■■ |
平成27年2月7日
松本 道宏 |
二月の名句は「水枕ガバリと寒い海がある 西東三鬼」です。 |
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突然に夫の名問われし冬日向 | 菊地智 |
日向ぼこをしていたとき、突然夫の名前を聞かれ、驚いている表情が目に見えるようです。面白いところを句にしています。 |
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冬座敷ほこりまみれの観世音 | たま四不像 |
冬座敷に飾ってあった観世音菩薩が埃まみれになっていたのでしょう。普段の掃除が行き届いていないところを見つけてしまった作者の驚きが現われています。 | |
年賀状当たり番号見つけたり | 野路風露 |
今年戴いた年賀状の当選番号を調べていたら次から次へと当たり番号を見つけた喜びが読まれています。 | |
校庭に凸凹ならぶ雪だるま | 飯塚武岳 |
校庭に大きな雪だるまや小さな雪だるまが並んでいたのでしょう。雪だるまを作った生徒は同じ学年でないのはすぐに分かります。 |
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第130回句会 (2015年1月) 参加者:12名 |
■ 作 品 ■■■ |
何事もないふりをして毛糸編む | たま四不像 | ←最高得点 |
豆を煮る音かすかなる去年今年 | 浅木純生 | |
風花や地面に果つることもなし | 舞岡柏葉 | |
水墨の世界に招く冬の霧 | 野路風露 | |
凍星とすれちがひゆく宇宙船 | 夏陽きらら |
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恙無く過ごして今日の柚子湯かな | 奥隅茅廣 |
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木枯や落選ポスター笑顔なり | 松本道宏 |
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スカイプでの参加もありて去年今年 | 千草雨音 |
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昼と夜鬩(せめ)ぎ合いつつ冬至かな | 飯塚武岳 | |
咳ひとつ厠にありて日曜日 | 吉木つつじ | |
空き店舗目立つ街にも年の市 | 境木権太 | |
闇を裂く紅蓮の炎初社 | 志摩光月 |
■ 弘明寺抄(58)■■ |
平成27年1月7日
松本 道宏 |
新年明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い申し上げます。 昨年に続き今年も各月の名句と作者を紹介します。 一月の名句は「去年今年貫く棒のごときもの 高濱虚子」です。 (前号より続く)高濱虚子は子規の協力を得て柳原極堂が松山で創刊した俳誌「ホトトギス」を引き継いで東京に移転、俳句だけでなく和歌、散文などを加えて俳句文芸誌として再出発しました。子規の没した1902年、俳句の創作を辞め、小説の創作に没頭しています。 1910年一家を上げて鎌倉市に移住。以来亡くなるまでの50年間を鎌倉で過ごしました。1913年、碧梧桐に対抗するため俳壇に復帰。この時碧梧桐の新傾向俳句と対決の決意表明ともいえる有名な「春風や闘志抱きて丘に立つ」を詠んでいます。そして同年国民新聞時代の部下であった島田青峰にホトトギスの編集を一切任せました。 1937年芸術院会員。1940年日本俳句作家協会会長。1944年9月4日より1947年10月まで小諸市に疎開した。1954年文化勲章受賞。1959年4月8日85歳で永眠。戒名は虚子庵高吟椿居士。墓は鎌倉市の寿福寺。椿寿忌。生涯に20万句を超える俳句を詠んでいます。2000年3月28日小諸高浜虚子記念館。4月に芦屋市に虚子記念文学館が開館しています。 その他の一月の秀句は昨年の1月の記事を参考にして下さい。 |
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飛行機の軌跡くっきり冬の空 | 野路風露 |
冬空にくっきりと軌跡を残して飛行機の飛んでいく情景が目に見えます。 |
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民宿に掘り炬燵ある和みかな | 奥隅茅廣 |
冬は掘り炬燵が一番です。確かに「和み」と言いたくなります。 | |
恙無く過ごして今日の柚子湯かな | 奥隅茅廣 |
柚子湯に入って恙なく過ごしてきた一年の実感が伝わってきます。 | |
幸せは地球に住みて日向ぼこ | 吉木つつじ |
寒く厳しい冬は日向が恋しく、この地球での日向ぼこに幸せを感じます。 |
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