2020年
 
2020年12月 第197回さわやかネット句会 作品 特選句短評
2020年11月 第196回さわやかネット句会 作品 特選句短評
2020年10月 第195回さわやかネット句会 作品 特選句短評
2020年9月 第194回さわやかネット句会 作品 特選句短評
2020年8月 第193回さわやかネット句会 作品 特選句短評
2020年6月 第192回さわやかネット句会 作品 特選句短評
2020年5月 第191回さわやかネット句会 作品 特選句短評
2020年4月 第190回さわやかネット句会 作品 特選句短評
2020年3月 第189回さわやかネット句会 作品 特選句短評  
2020年2月 第188回さわやかネット句会 作品 特選句短評  
2020年1月 第187回さわやかネット句会 作品 特選句短評  
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 第197回さわやかネット句会  (2020年12月)            参加者:13名

 

 
 

 第196回さわやかネット句会  (2020年11月)            参加者:13名

 

 
 

 第195回さわやかネット句会  (2020年10月)            参加者:13名

 

 
 

 第194回さわやかネット句会  (2020年9月)            参加者:14名

 

■ 作 品

 最高点句
百万の秋桜がゆれ海がゆれ たま四不像
備蓄庫の指差し呼称防災日 飯塚武岳
残る蚊にシャツを突き刺す力あり 小正日向
道の駅漆びかりの唐辛子 千草雨音
秋茄子や紺の鎧に身を固め 境木権太
ベランダの椅子のへこみや秋の雨 志摩光月
木村屋のあんばんの餡泉鏡花忌 森かつら
奉納の碑には妣の名秋彼岸 名瀬庵雲水
大地より噴き出し開く曼珠沙華 野路風露
月高く津波の駅を見下ろせり 真野愚雪
朱き穂や棚田の形(なり)に曼珠沙華 翁山歩存
湖面へと広がりしかな天の川 石  敬
澄みし空流るる雲よ初恋よ ただの凡庸
樹木葬の霊園下見秋高し 舞岡柏葉

 
 

 第193回さわやかネット句会  (2020年8月)            参加者:14名

 

■ 作 品

 最高点句
盆芝居外郎売りの長口上 千草雨音
極暑くるみんなムンクのような顔 たま四不像
コロナ禍やつかず離れず盆踊 飯塚武岳
周作の「沈黙」の島黙(もだ)の夏 翁山歩存
三尺の流儀を伝え揚花火 名瀬庵雲水
コロナ禍や光を宿す草の露 志摩光月
蜩や外しためがね見つからず 小正日向
断崖に白百合咲いて戦果つ 境木権太
嬰児(みどりご)の首座りたり終戦日 舞岡柏葉
滴りの一打一音窓の外 ただの凡庸
子等綴る父鴎外を秋そうび 岡田克子
枕に本宵も知らずに外寝かな 石  敬
峠越えうつむく背(せな)に蝉時雨 真野愚雪
朝の日の畑の脇のオクラなり 境木権太

 
 

 第192回さわやかネット句会  (2020年6月)            参加者:16名

 

■ 作 品

 最高点句
鮎釣りや経木にのせた握り飯 森かつら
カラフルに街をゆきかふ夏マスク 飯塚武岳
棚田一枚また一枚と田水張る 舞岡柏葉
水鉢の目高は何時も自粛中 千草雨音
風通るバスの窓辺や梅雨晴間 志摩光月
豊かなる腕の白さや衣替ふ たま四不像
令和弐年眠ったままの荒神輿 ただの凡庸
鉄路尽き無人駅舎は青葉雨 真野愚雪
茗荷食べ心の刺を忘れたし 野路風露
この先は運にまかせて心太 岡田克子
童心へ一気に駆ける海開き 境木権太
茹でたての新じゃがに塩祖母の味 小正日向
ビール手に肴と笑みのウエブ友 翁山歩存
田植終え雉鳩(きじばと)の鳴く帰り道 銀の道
穴子丼テイクアウトでぶらりかな 名瀬庵雲水
アジサイへ目は心かな微笑みし 石  敬

 
 

 第191回さわやかネット句会  (2020年5月)            参加者:15名

 

■ 作 品

 最高点句
青嵐地元車だけの道の駅 ただの凡庸
ドクターとナースの走る聖五月 たま四不像
梔子をふところに入れ逢いにゆく 岡田 克子
人情をネットで送る梅雨籠り 志摩 光月
湯の宿に卯の花腐し山煙る 境木 権太
大山道の苔むす標(しるべ)夏始め 舞岡 柏葉
そら豆の薄皮剥きて塩ふりて 森 かつら
枇杷熟れてひと無き庭の真昼刻 真野 愚雪
道楽は大学通い余花の雨 飯塚 武岳
人自粛草木茂りて鳥遊ぶ 千草 雨音
境界の小径みみずの塞ぎをり 名瀬庵雲水
黒揚羽命をつなぐ花渡り 翁山 歩存
札所への道案内はしゃがの花 小正 日向
野の花の首飾り添え道祖神 野路 風露
管弦祭リモートされど揺さぶりし 石   敬

 
 

 第192回さわやかネット句会  (2020年6月)            参加者:16名

 

■ 作 品

 最高点句
鮎釣りや経木にのせた握り飯 森かつら
カラフルに街をゆきかふ夏マスク 飯塚武岳
棚田一枚また一枚と田水張る 舞岡柏葉
水鉢の目高は何時も自粛中 千草雨音
風通るバスの窓辺や梅雨晴間 志摩光月
豊かなる腕の白さや衣替ふ たま四不像
令和弐年眠ったままの荒神輿 ただの凡庸
鉄路尽き無人駅舎は青葉雨 真野愚雪
茗荷食べ心の刺を忘れたし 野路風露
この先は運にまかせて心太 岡田克子
童心へ一気に駆ける海開き 境木権太
茹でたての新じゃがに塩祖母の味 小正日向
ビール手に肴と笑みのウエブ友 翁山歩存
田植終え雉鳩(きじばと)の鳴く帰り道 銀の道
穴子丼テイクアウトでぶらりかな 名瀬庵雲水
アジサイへ目は心かな微笑みし 石  敬

 
 

 第191回さわやかネット句会  (2020年5月)            参加者:15名

 

■ 作 品

 最高点句
青嵐地元車だけの道の駅 ただの凡庸
ドクターとナースの走る聖五月 たま四不像
梔子をふところに入れ逢いにゆく 岡田 克子
人情をネットで送る梅雨籠り 志摩 光月
湯の宿に卯の花腐し山煙る 境木 権太
大山道の苔むす標(しるべ)夏始め 舞岡 柏葉
そら豆の薄皮剥きて塩ふりて 森 かつら
枇杷熟れてひと無き庭の真昼刻 真野 愚雪
道楽は大学通い余花の雨 飯塚 武岳
人自粛草木茂りて鳥遊ぶ 千草 雨音
境界の小径みみずの塞ぎをり 名瀬庵雲水
黒揚羽命をつなぐ花渡り 翁山 歩存
札所への道案内はしゃがの花 小正 日向
野の花の首飾り添え道祖神 野路 風露
管弦祭リモートされど揺さぶりし 石   敬

 
 

 第190回さわやかネット句会  (2020年4月)            参加者:13名

 

■ 作 品

 最高点句
逢えぬ日のつもりて麦の穂波かな 千草 雨音
分け入りて伊豆の山葵田余花の谷 境木 権太
物思ひ重ね千年滝桜 真野 愚雪
嘆くこと勿れ初蝶十日の生 舞岡 柏葉
サンプルのクリームのびる春満月 岡田 克子
葱坊主となりの奴は鍋の中 森 かつら
春惜しみ物と会話す自粛かな 志摩 光月
春マスク挨拶されて戸惑いぬ 飯塚 武岳
三浦海(み)へ人輪一体風光る 翁山 歩存
指折りて行ったり来たり花の下 小正 日向
物の怪の退治を願ひ菖蒲葺く ただの凡庸
海明や匂へる沖の波がしら 名瀬庵雲水
緑立つ光そよぎて窓にさす 石   敬

 ■第190回インターネット句会特選句短評  
  岡田克子選  
 特選 指折りて行ったり来たり花の下(小正日向)
   五・七・五と指を折りながら川沿などの桜並木を歩くが、いっこうに句が浮んでこない。いつのまにか桜並木も途切れ、折り返しがてみたがまだ作句できないと又折り返すが結局は桜の素晴らしさは詠めずにその行動のみが作品になった。俳味がありました。

  分け入りて伊豆の山葵田余花の谷(境木権太)
   山葵は山間の水の綺麗な渓流などの所で育つ。伊豆の森林の中を歩き廻り山葵田を見つけた、渓谷には残る桜が咲いている。ほっとして清々しいです。この実景では季重ねもやむをえないとしました。

  ホタルイカ海のオーロラ富山の海(み)(翁山歩存)
   富山湾にホタルイカが押し寄せて闇夜に発光して光り輝く、私は漁獲を見学したことがあります。アミを引き上げる時の景を作者はオーロラとたとえている感性が良かった

  三蜜もコロナに向ひ幟立つ(ただの凡庸)
   密閉空間、密集、密接と三密も合言葉になりました。節句の鯉幟は三密を避けて、大空で真鯉、緋鯉、子鯉と気持ちよさそうに泳いでいる。早く我々も自由に街に出たいものです。

  コロナ禍の外出自粛亀鳴けり(飯塚武岳)
   時事句は避けた方が良いとされているが、コロナはもはや世界難となっていて離れられない。鳴かない亀も鳴くのです。    その他のコロナ句。 「物言えばコロナコロナの四月尽」「物の怪の退治を願ひ菖蒲葺く」言いあえていて良かったです。

   

夏を待つ東雲の風太極拳 (志摩光月)

 (石 敬)夜明けの清々しさに力強さと希望を感じさせるいい句ですね。夏が待ち遠しい時期になりましたね。

サンプルのクリームのびる春満月(岡田克子)

 (千草雨音)4月8日の耿耿としたスーパームーンの美しさと、サンプルのクリームの伸びの良さとの取り合わせの妙に、にっこりと感心しました。
 (舞岡柏葉)登り始めた低い空の赤いスーパームーンは強烈でした。「伸びるクリーム」は女性ならではの表現ですね。

物思ひ重ね千年滝桜(真野愚雪)

 (飯塚武岳)春の滝桜も新型コロナウイルスで観光受け入れが中止になっています。樹齢千年ですが今の世の中をどんな思いで見ているのでしょうか。
 (境木権太)三春の滝桜でしょうか。圧倒的で流麗な姿を前に、何を思いながら1000年の時を重ねたのかと問いたくなる作者の感動が伝わりました。

春惜しみ物と会話の自粛かな(志摩光月)

 (ただの凡庸)こんなに素晴らしい春なのに他の人と話すことができない。コロナ自粛の様子が表現されている 。

逢えぬ日のつもりて麦の穂波かな(千草雨音)

 (名瀬庵雲水)麦の穂波を見て、特に親しい人 ( 会うではなく、逢うとあるので )に逢えぬ心情を詠んだ句。" つもりて " は " 積もりて " の意味だと思うが、一定の時間の経過も含め、むしろ " つのりて " 或は " 募りて " 〔 用例 〕「 恋しさが ー る 」としたいが、如何でしょうか。

大潮も看板だけの潮干潟 (ただの凡庸)

 (森かつら)今年はニュースでみるだけの潮干狩になりました。残念です 。

分け入りて伊豆の山葵田余花の谷(境木権太)

 (翁山歩存)意味も雰囲気も良く分かり特選とした。山葵と余花とが季重なりと なっているのが課題で気になったが、余花が主と理解して読んだ。

みちのくの山路に春の霰かな(真野愚雪)

 (小正日向)雪の季節が終わって、春を迎えた喜び伝わる句だと思い選ばせてもらいました。

嘆くこと勿れ初蝶十日の生(舞岡柏葉)

 (志摩光月)コロナ禍で無常を身にしみて感じます。時を得た句だと思います。

葱坊主隣のやつは鍋の中(森かつら)

 (真野愚雪)ねぎが擬人化され、人の世の哀しみが滑稽な調子でわれます。嫌味なヤツは鍋の中でお陀仏だ、いい気味だぜ。 ・・・・でも次の番は オレなのかい!」

 
 

第189回さわやかネット句会  (2020年3月)             参加者:15名

 

■ 作 品

花衣鎌倉彫の下駄の音          千草 雨音

吊るし雛つかず離れず風まかせ     飯塚 武岳

春薄暮蕎麦屋のレジに算盤が      岡田 克子

遍路宿にぎり二つのお接待        翁山 歩存

春置いて道果つ宿や鰺ヶ沢        真野 愚雪

湖西線比良八荒の舫い綱         名瀬庵雲水

パンデミック騒ぎを他所のいぬふぐり   森 かつら

一茶に菊女一級に森女白き梅       たま四不像

ふるさとの香りを運ぶよもぎ餅       ただの凡庸

塩一振り鍋いっぱいに浅利汁       石  敬

切り枝で夫と花見やウイルス禍      志摩 光月

花冷えや旅人急ぐ馬籠宿          境木 権太

奈良井宿の風の和みや入彼岸       舞岡 柏葉

花冷えや借りたスカーフ少し派手     小正 日向

お出かけに洗ったマスク花曇り      遊戯 好楽

   

第189回インターネット句会特選句短評  
 

岡田克子選  

特選 パンデミック騒ぎを他所のいぬふぐり   森かつら

    今、世界中で新型コロナで愴然としている中で、いぬふぐりは道端に水色の可憐な花を咲か

   せ踏まれてもたくましくはびこっている。いぬふぐりにとっては何のそのです。いぬふぐりの取り

   合せが良かった。

   花衣鎌倉彫の下駄の音  千草雨音

    花衣は花見に行くときに着る着物。前行く人の足元を見てあのあめ色は鎌倉彫りの下駄だと

   分かった。宿屋の下駄とは違った趣きのあり品のある鎌倉彫りの下駄を履く人の着物まで想
  
   像できる。石畳を歩く音がこころ良い。

   遍路宿にぎり二つのお接待  翁山歩存

    遍路宿から遍路宿へ遍路の旅は続く、今日の宿は二個のにぎり飯で迎えてくれた。二人分で

   はなく一人分と読みました。

   吊るし雛つかず離れず風まかせ  飯塚武岳

    吊るし雛を初めて知ったのは伊豆の旅先でした。布で細工した手まり、花、小動物、たわら、

   草履等を、一本の紐に幾つか結びつけそれを何本かを等間隔でまとめて吊るす。観光客に見

   せるために戸や窓を開けている、そこから春の心地よい風が吊るし雛を揺らしている。

   春の宵寄せ木細工のオルゴール 千草雨音
 
    毎日のコロナニュースで不安のつのる時に、オルゴールの独特な音色は心の安らぎになる。

 

啓蟄や向学心のむらむらと(飯塚武岳)

(たま四不像)こういうことを俳諧味というのかどうかわかりませんが、今回の5句選句の自分的テーマ

は思わずクスッと笑えた句です。選んだこの句は、虫も土から外へ出て活動を始めたことに啓発

されたのか、ご自分も「向学心」が出てきたのでしょうか。それを「むらむら」と表現したところに思わ

ず笑えましたアハハ。



花衣鎌倉彫の下駄の音(千草雨音)                        

(飯塚武岳)花見の晴れ着をまとい、鎌倉彫の下駄を鳴らして散りかかる桜の下を闊歩する粋な姿

が目に浮かびます。

(小正日向)歩いてる姿が見えるようで美しい句だと思いました。



思い出も攫うて花の潮かな (真野愚雪)

(名瀬庵雲水) 「 落花流水 」を詠んだと捉えたい。花筏をヒントにしたのか。上五の' 思い出でも'は

男女の感情を表現したものか、切なさを感じます。                

(志摩光月 )花と潮の取合わせが良いと思います。



パンデミック騒ぎを他所のいぬふぐり(森かつら)

(千草雨音)実感!地上の星のごとくキラキラ輝いていますね。鬱々とした世情を忘れさせくれる自

然の春の息吹を感じました。



切り枝で夫と花見やウイルス禍 (志摩光月)  

(ただの凡庸)コロナウイルスで花見に行けない。家の中で桜の切り枝のお花見…様子が浮かんで

くる。



宿を得しがうなそろりと第一歩(舞岡柏葉)

(翁山歩存))"がうな"という言葉は知りませんでした。雰囲気が分かります。"そろりと第一歩"が良

いです。私はまだ見たことがありませんが。



湖西線比良八荒の舫い船(名瀬庵雲水)  

(舞岡柏葉)琵琶湖は西側と東側では雰囲気が異なります。骨太いしっかりした句で西側の情景が

うまくとらえられています。



たんぽぽの毬毛ふんわり青空へ (ただの凡庸)

(遊戯好楽)春の終わりごろの暖かい日に、白い綿毛のタンポポをちぎり、ふっと息を吹きかけた子

供のころを思い起こすような、そんな絵のような景色が思いうかび、頂きました。



春追いて路果つ宿や鰺ヶ沢(真野愚雪)


(境木権太)遅い春を追って日本海に面した道の果ての津軽の鯵ヶ沢までやってきた。「道果つ」に

春の終わりを惜しむ作者の気持ちが感じられる。



 句の友の終の棲家は花の下 (真野愚雪)

(森かつら) 友の棲家を訪ねての一句、優しさが伝わります。

吊るし雛つかず離れず風任せ(飯塚武岳) 

(石  敬)可愛らしさと、そよ風も感じ、季節感を感じさせるいい句ですね。鴨川沿いの川べりの宿

の縁側に吊るされた雛をイメージしました。 

 

一茶に菊女一休に森女しろき梅 (たま四不像)

(真野愚雪) これは 八−八−五になるんですか?でも さらりと詠まれているので全然違和感を覚

えず、うまく用いられた季語が背景になって、清々しい色香を漂わせる新鮮な句になっているように

感じます。

 
 

第188回さわやかネット句会  (2020年2月)             参加者:15名

 

■ 作 品

三椏の花膨らます読経かな          境木 権太 ← 最高点句
    
桜咲く手垢で汚れた参考書          ただの凡庸

ほろ酔えばおかめ桜のおちょぼ口      真野 愚雪

梅三分一つ増えてる無縁墓          岡田 克子

老翁の背押してゆく春一番           飯塚 武岳

車中から両手振ってる春帽子         小正 日向

春立つや韻をふみたくなる心地        たま四不像
  
参禅に痺れ残さん臥龍梅            名瀬庵雲水

インバウンドの人影退きて二月尽       舞岡 柏葉
 
駿河海(み)の広さしたがえ富士朧       翁山 歩存

雛あられ想いて今年は買わんかな       石  敬

春めくや祖母も輝く宮参り             志摩 光月

イベントの延期中止や涅槃西風(ねはんにし) 千草 雨音

新型のコロナ飛ばして春一番          野路 風露

春雀ちゅんちゅんちゅんと参上す         森 かつら

   

第188回インターネット句会特選句短評  
 

岡田克子選

特選 児が去りて夕陽がぶらんこ漕いでおり  ただの凡庸

 日の暮れて児童達が家路へ、その後に夕陽が遊びに来た。ぶらんこの座席に夕陽が射してぶら

んこを揺らした。夕陽が漕ぐことはないが、これは作者の心象風景。

疫病の静まらんかな福参り       石  敬

 新型コロナウイルス一日も早くおさまって欲しいです。公演の中止、相撲の無観客等々。我々も自

粛を余儀なくされました。

ほろ酔えばおかめ桜のおちょぽ口    真野愚雪

 俳諧味あり。おかめ桜の名詞に対して、おちょぽ口におかしみがある。

三椏の花膨らます読経かな       境木権太

 三椏の蕾を膨らませるのは、読経であると。言い切ったいるのが良かった。 

母に似る観音の目や春うらら      小正日向

 大船の観音さまが浮びました。子供にとって母親はやはり一番だと思います、私もそうです。お母

さま似の目元を見つめていれば、気持ちも春うららとなる。

 

落椿恋の末路かただ紅く(飯塚武岳) 

(たま四不像)何気ない句ですが面白いと思いました。椿は花 びらが散らず首がらぽとりと落ちる

不吉な花とされています。その様子を「恋の末路」として「紅」を持ってきて表現し、しかも「か」とした

ことにも小気味よさを感じます。「か」は疑問として読み手への投げかけなのか、はたまた恋への未

練なのか、なんだか作り手が想像できそうな句だなあと(笑)

新型のコロナ飛ばして春一番(野路風露)        

(石  敬)昔、私もコロナが愛車でした。晴天の春一番の中、湘南から江の島付近を海を右手にま

た左手にと飛ばしたのが懐かしいですね。

老翁の背を押しゆく春一番(飯塚武岳)

(ただの凡庸)閉じこもっていた寒い冬がすぎて暖かい春が来る。差外に出よう!…春の暖かさと明

るさを感じる。

春立つや韻を踏みたくなる気持ち(たま四不像)


(境木権太))待ちに待った春の到来に浮き浮きした気持ちを、「韻をふみたくなる心地」と表現して

共感しました。

三椏の花膨らます読経(境木権太)

(翁山歩存)静かに 読経の声が聞こえてくる。その処に三椏の木があり花が膨らんできている場景

がよく表れている。 

桜咲く手垢で汚れた参考書(ただの凡庸)

(千草雨音)「サクラサク」の朗報を受け取った!机にはしっかり学んだ手垢で汚れた参考書が!い

いですね!

インバウンドの人波退きて二月尽(舞岡柏葉)

(飯塚武岳)新型コロナウイルスの影響で外人観光客が激減。現在の状況をよく現している。

雛あられ想いて今年買わんかな(石  敬)

(森かつら) 雛あられに何かの思い出でもあるかのような句

春めくや祖母も輝く宮参り(志摩光月)

(小正日向)初めてのお孫さんだったのでしょうか。おばあ様の喜びが伝わります。

イベントの中止延期や涅槃西風(千草雨音)           

(舞岡柏葉)全国に広がる不安や、未知なるものへの恐怖をまだア杯春の冷たい風でうまく表現さ

れている。時事俳句では使い にくい季語をうまく使っている。
 
梅三分ひとつふえてる無縁墓(岡田克子)

(名瀬庵雲水)短評無縁墓とは、お墓の継承者や縁故者が居なくなった墓のこと。ご供養で菩提寺

を訪れた際、無縁墓を目にされたのか。何故、無縁墓と気付かれたのか作者に伺いたい。やはり

俳句では、独自の目線での " 気付き " 肝要かと。 偶々、拙宅にも " 清掃・ 管理費納入のお願

い " が、菩提寺より届いた事もあり特選とさせていただきました。 

 
 

第187回さわやかネット句会  (2020年1月)                  参加者:16名

 
 

■ 作 品

行間に浮かぶ昔日年賀状          翁山 歩存   最高点句

闇しずか汽笛が分かつ去年今年      ただの凡庸

肝心なことを云えずに雪積る         岡田 克子

ハンガーにダウンコートの怒り肩      舞岡 柏葉

晨風(しんぷう)や寺院巡りの肌を刺す   森 かつら

故郷の味しみこませ凍豆腐           たま四不像

分け入れて森の冬芽の動く音         境木 権太

知りたしや俳句要訣寅彦忌           石  敬

重要と赤丸入れる初暦             小正 日向

一人居や律義に冬至南瓜かな        菊地 智

積弊の心身癒す柚湯かな           飯塚 部岳

必要とされずにすぎる三ケ日          志摩 光月

憂き日にはわれの友たれ冬木立       真野 愚雪

狐日や心張りを支(か)ふ大年増       名瀬庵雲水

お雑煮は白みそ仕立て「おいしおす」     千草 雨音

万両の実見ごろ小鳥に先越され        野路 風露
    

   

第187回インターネット句会特選句短評  
 

岡田克子選

特選 知りたしや俳句要訣虎彦忌  石  敬

 寺田寅彦は「歳時記は日本人の感覚のインデックスである」と言っております。忌日の句はなるべ

く故人とゆかりのある様に詠むと良いと言われております。この句は詠まれております。

 

鏡餅家の要と鎮座せり    ただの凡庸

 床の間にお正月らしい掛軸が下がり。りっぱな鏡餅が飾られている景が浮かびました。

 

晨風や寺院巡りの肌を刺す  森かつら

 晨風とは冬の季語。朝吹風のこと。お正月なので七福神巡りを今日一日で廻りきる様にと、早朝

に家をでる、早朝の風は冷たく肌を刺して来る。

 

健康は生きる要や初詣    翁山歩存 
    
 健康にこしたことはない、健康だからこそ初詣に苦もなくいける。身体の大切な部位は腰なので腰

の字に要が使われている。

 

必要とされずに過ぎる三ケ日  志摩光月
 
おもしろみのある句。三ケ日だけなのでしょうか。

 

   新年のご挨拶

  皆さま
   明けましておめでとうございます

早いもので三年目に入りました。皆さまとご一緒に 

あじわいのある句 

しみじみとした句 

あっけらかんとした句

そして恋の句 等 等 詠んでいきたいと思います。

楽しく、ためになる句会に。俳句に近道はありません。

今年も、宜しくお願い申し上げます。


肝心な事を云えずに雪積る (岡田克子)
                            
(たま四不像)今回の5句は作り手の目のつけどころという「気づき」がみられ、それが「リアル感」を

かもしだしているものを選びました。特選句は「雪積る」という季語で成功。この季語で肝心なことが

いえないでいる時間の経過を表わしていますから。                           

(小正日向)雪積るという一言が、時間だけが過ぎていくという焦りをよく表していると思いました。



お雑煮は白みそ仕立て「おいしおす」(千草雨音)

(翁山歩存) 関西圏、京都では白味噌の雑煮が出される。京都の雰囲気が良く出ていて特選とし

た。但し、関西出身の私自身の好みとしては白味噌雑煮は今一つだった。

闇しずか汽笛が分かつ去年今年(ただの凡庸)

(飯塚武岳)静寂な闇を切り裂く汽笛の音。一年が終わり一年が始まる瞬間を上手くとらえている。

(石 敬)大晦日、除夜の鐘ではなく、突然ボーという港から聞こえてくる船の「汽笛が分かつ」が、

横浜に住む者の心に響きますね。

(境木権太)大晦日のしずかな闇の中、夜行列車が汽笛を鳴らし、今年から新年に年を分かちなが

ら過ぎ去って行った。懐かしい映画のシーンを思い出すような句です。

 

待ちわびし黄実の千両雨の庭(森かつら)

(ただの凡庸)手をかけて育てた黄実千両、いつ咲くのかと待ち望んでいたら、雨の日の庭に咲い

ていた綺麗な句だと思いました。

 

 重要と赤丸入れる初今宵(小正日向)                          

(野路風露)私も新しい暦に丸印を入れました。

 

行間に浮かぶ昔日年賀状(翁山歩存)

(千草雨音)年賀状に知人の昔日を懐かしく思い出す!しみじみとその気持ちが共感できました。

(舞岡柏葉)細々と賀状のやり取りで、早や数十年が過ぎてしまう。只々思い出すのは、昔日の楽し

い思い出か。

(森かつら) 行間を空ではなく読みとる感性が伝わる 素敵な一句

快便に胸なでおろすお正月(志摩光月)

(名瀬庵雲水)誰でも一度や二度は経験したことがある。" 胸なでおろす " は、実感。


指切りの約束胸に初詣(飯塚武岳)                               

(志摩光月)指切りは若者の特権ではないのですね。


晨風(しんぷう)や寺院巡りの肌を刺す(森かつら)

(菊地 智)イヤーマフも欲しいですね。


 分け入りて森の冬芽の動く音(境木権太)

(真野愚雪)「冬芽」という季語の面白さをどう表現するか?作者は「分け入る森」という静謐な世界

を作り、その中に かすかに「動く音」によって、力強い自然の生命力を表わされました。